コラム②ランナーのための HRV(心拍変動)解説ガイド―データ&失速例つき―

1.HRVの基本

1-1. HRVとは?

私たちの心臓は「60 回/分」といった一定のリズムで動いているように思えますが、実際には拍動と拍動の間は毎回わずかに揺れています。
この揺らぎの大きさを数値化したものが HRV(=Heart Rate Variability/心拍変動)です。

  • ゆらぎが大きい … 心臓がリラックスと活動を柔軟に切り替えられる状態
  • ゆらぎが小さい … 交感神経が優位になり、緊張やストレスを抱えやすい状態

HRV はいわば 自律神経のバランス計。リカバリーが進んでいるか、それとも疲労が残っているかを客観的に示してくれます。

1-2. HRVとコンディションの関係

HRVの傾向体が示すサインランニングの目安
高い(平均より+)副交感神経が優位。睡眠の質が良く、回復が進んでいるインターバルやロング走など高負荷もこなしやすい
平均付近通常どおり予定メニューを実施
低い(平均より-)交感神経が優位。睡眠不足・精神的ストレス・疲労の蓄積などEジョグ/ウォーク/完全休養で立て直す

ポイント

  • HRV は“自分の平均値”と比べて高いか低いかを見るのが鉄則。
  • 安静時心拍数(RHR)とセットで確認すると、変化の理由がより読み取りやすい。

1-3. HRVが変動する主な要因

上げる要素(+)下げる要素(-)
十分な睡眠寝不足・不規則な生活
適度な有酸素運動過度な高強度トレーニング
リラックス時間(入浴・ストレッチ・呼吸法)精神的ストレス・カフェイン過多
バランスの良い食事・水分補給アルコールの過剰摂取・脱水

2.トレーニングにおけるHRV

用語意味トレーニングへのヒント
HRV (Heart Rate Variability)心拍と心拍の間隔の“ゆらぎ”値が高い=リラックス/低い=ストレス
副交感神経休息・回復モードHRVを高める方向に働く
交感神経戦闘・活動モードHRVを下げる方向に働く
  • HRVが高い日体が回復モード → 高負荷 OK
  • HRVが低い日疲労・睡眠不足・暑熱ストレス → 休養かEジョグ

2-1.7/18 – 31 のHRV推移と読み取り方(実データ)

期間シンボル7日平均 (ms)コメント
7/18 – 24◆(ベースライン構築)67 → 65判定なし
7/25 – 27▲(低)61 → 60閾値走×2+30 ℃超で急落
7/28▲(低)60赤信号:ロング予定日に失速
7/29■(アンバランス)62Eジョグのみで様子見
7/30 – 31●(バランス)63 → 64完全休養+朝ランで回復

読み方のコツ

  • アイコン▲(赤)が2 – 3日続く → 過負荷の兆候
  • 回復策(睡眠+休養)で●(緑)圏内に戻るかを確認する

2-2. HRV低値日のリアル失速例(実データ)

7/28(月)
起床時 HRV 60 ms(赤▲)/安静HR +5 bpm
計画: Eロング14 km @5’15/km → 実績:6 kmで終了

kmペース平均HR傾向
15’04142余裕あり
25’05153+11 bpm
35’03158HR上昇続く
45’08161ペース↓/HR↑
55’14161脚が重い
65’26162失速確定

原因を振り返る

  1. HRV低下=交感神経優位で心拍が上がりやすかった
  2. 睡眠5 h・気温28 ℃の暑熱ストレス
  3. 「予定距離を消化したい」メンタルで引き際が遅れた

教訓

  • HRVが低い日は距離半減 or 休養を即決
  • カーディアックドリフト(ペースは下がっているのに心拍は高くなる)の際は5 km以内で切り上げ

3. よくある質問&実践ステップ

QA
数値が乱高下して読めません1日値ではなく7日平均+SWCを採用
高値の日は追い込んでOK?主観疲労も確認。脚が重ければペース▲10 %で様子見
友達よりHRVが低い他人比較は不要。“自分比”で上下を判断

4.今日からできる3ステップ

  1. デバイスで計測(就寝中自動計測がベスト)
  2. 14日連続で測って平均とSWCを把握
  3. 低い日は攻めない・高い日は予定通り—これだけでOK!

5.まとめ

  • HRVは“走れる日・休む日”を数値で示すコンパス
  • 低値の日に無理をすると失速や故障リスク大
  • 睡眠・栄養・Eジョグで回復すれば、数値もパフォーマンスも上向く

数字を味方に、賢く・長く・楽しく走りましょう。予定があるため次回の1週間フィードバック(7/28~8/3)のアップは来週になります。

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